元F1ドライバーの中嶋一貴は,小林可夢偉が来シーズンのF1シートを諦めざるをえない現状場について,コラムに次のように心境を寄せた。
『もちろん,僕が所属するトヨタも含めて,いくつかのメーカーが若手を育成するプログラムを継続してくれています。ただ,若手ドライバーの誰もがあこがれるF1に日本からデビューする道は,閉ざされかかっていると言わざるを得ない状況です。可夢偉選手でさえ,苦労しているのですから……。
F1はレーシングドライバーにとって,いわばオリンピックのようなもの。そこで活躍することはドライバーにとって夢です。また日本人ドライバーが活躍することはモータースポーツを見るファンの皆さんにとっても魅力が増すはずです。日本では僕の父,中嶋悟がF1で走っていた1980~90年代にかけ,F1人気がピークを迎えました。アイルトン・セナ,アラン・プロスト,ナイジェル・マンセル……。多くのスター選手が活躍した黄金時代です。しかし,日本のモータースポーツ界はこの絶好の機会を,モータースポーツの裾野拡大に十分に生かすことができなかったと思います。
僕のようにF1でデビューを果たせた者のこれからの役割は,日本の一般の方々にもっとレースの魅力を知ってもらい,若手ドライバーを取り巻く環境を底上げすることだと思います。僕だけでなく,最近は多くのレーシングドライバーが従来にも増してファンサービスに取り組むようになりました。もちろん競技に集中することが第一なので,まだまだ充分ではない部分も多いでしょうが,それでも以前よりも様々な角度からレースを楽しんでもらえるようになってきていると思います。みなさん,機会があれば来年,レースを一度見に来て下さい。』
[2012.12.19]
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